化学物質過敏症で緊急搬送⁉悩みを抱えている人多数|学校や職場での対処法や症状緩和方法を紹介

(スポンサーリンク)

2025年12月11日(木)のYahoo!ニュースで取り上げられ話題となっている「化学物質過敏症」。ニュースでは、柔軟剤や化粧品などが原因で発症する「化学物質過敏症」によって、学生生活が送れなくなった足立さんが、講演会を行った様子が取り上げられていました。

この記事は、化学物質過敏症(Chemical Sensitivity, CS)の症状に悩まれている方、あるいはこの病気についてまだよく知らない方を対象に、病気の概要から具体的な学校・職場での対処法、そして日常生活で症状を緩和させる方法までを、分かりやすく、そして深く掘り下げてお届けします。

目次

化学物質過敏症とは?

化学物質過敏症(CS)は、微量の化学物質に触れたり、吸い込んだりすることで、体調不良や様々な不快な症状が引き起こされる病気です。シックハウス症候群の一種として知られることもありますが、CSは特定の環境だけでなく、日常生活のあらゆる場面に存在する化学物質が引き金となり得ます。

誰もが普段何気なく使用している洗剤、化粧品、香料、農薬、排気ガス、建材などに含まれる極めて微量の化学物質が、CS患者さんの体内では「毒物」として認識され、過剰な反応を引き起こします。

一度にある程度の量の化学物質に曝露されたり、あるいは微量でも繰り返し曝露されるうちに、体が感受性を高めていきます。その後、それまで平気だった極めて微量の化学物質に対しても、身体が異常な反応(過敏症)を示すようになります。

実際ニュースで取り上げられた足立さんも、小学5年生で発症したそうです。足立さんはある日突然、柔軟剤の香りで呼吸困難となり緊急搬送されたとのこと。1週間ほどで退院できたそうですが、学校に登校すると首にみみず腫れが出て、それ以降は学校に行けなくなってしまったそうです。

全身にわたる不調

化学物質過敏症の症状は多岐にわたり、「不定愁訴」と呼ばれる、原因が特定しにくい不調として現れることが多いそうです。特定の臓器だけでなく、全身のあらゆる部位に影響を及ぼします。頭痛、めまい、ふらつき、集中力低下、記憶障害、不眠、しびれなどの神経系症状、鼻炎、喉の痛み、咳、喘息様の呼吸困難などの呼吸器系の症状、湿疹、かゆみ、目の充血・痛み、涙、口の渇きなどの皮膚症状、吐き気、腹痛、下痢、食欲不振などの消化器系に症状が現れることも。また、抑うつ、不安感、イライラ、倦怠感、無気力といった神経症状が現れる人もいます。

症状は体調や天候、曝露した化学物質の種類によって日々変動し、非常に予測しにくいのが特徴です。その苦しさは、周囲からは理解されにくく「気のせい」「精神的なもの」と誤解されることも少なくありません。

患者が最も避けるべき「三大トリガー」

症状は個人差が大きいですが、多くの患者さんにとって症状を強く引き起こす主要な化学物質のカテゴリーがあります。それが香料、建材・内装、そして農薬・殺虫剤です。

診断と治療の現状

化学物質過敏症は、まだ一般的に広く認知されているとは言えず、診断や治療が難しい側面があります。ニュースで取り上げられていた足立さんも、お母さんが調べて、症状から化学物質過敏症を疑い、東京の専門病院を探して受診したところ「化学物質過敏症」と診断されたそう。

現在、化学物質過敏症を明確に診断できる単一の検査方法はないそうです。主に問診、曝露回避による症状の改善状況、その他の疾患の有無などを総合的に評価して診断が下るようになっています。

化学物質過敏症には、確立された特効薬は今のところありません。治療の基本は、症状を引き起こす原因物質からの徹底的な「曝露(ばくろ)回避」です。自分の症状を引き起こす主な化学物質を特定し、自宅、職場、学校など、生活の場から原因物質を排除または低減します。足立さんの場合も、屋外での体育以外はリモートで授業を受けたり、インクの香りを吸わないようにと、教科書を外で干したりして対策したそうです。足立さんに限らず、無香料・無添加の製品への切り替え、換気、空気清浄機の利用など、化学物質に接する機会を減らすようにするのが、症状緩和につながると考えられています。

また、曝露回避と並行して体調を整えるための対症療法や、栄養療法、自律神経を整える治療などが検討されることがあります。専門医と相談しながら、自分に合った治療法を見つけることが重要です。

職場・学校での具体的な対処法

化学物質過敏症の方が社会生活を送る上で、最も大きな障壁となるのが職場や学校などの集団生活の場です。周囲の理解と協力が不可欠となります。

周囲への理解を求めるためのステップ

症状に悩む人が最初に行うべきことは、自分の状況を正確に、かつ感情的にならずに周囲に伝えることです。

専門医に診断書を作成してもらい、公式な文書として提出します。これにより「個人的な好み」ではなく「医学的な病気」であることが証明できます。

次に行うべきことが、具体的な症状と原因を伝えること。「香水が苦手」ではなく「特定の合成香料に曝露されると、重度の頭痛や呼吸困難を引き起こし、業務/学習に支障が出る」と具体的に伝えます。化学物質過敏症の人にとって最も大きなトリガーの一つが「香料」です。職場の部署内やクラス内に、せめて「香りの強い製品(柔軟剤、整髪料、香水など)の使用を控えてほしい」と具体的に依頼します。

作業環境の改善

まずは座席の配置から整えます。窓際など換気の良い場所や、香料を使用する人から最も離れた席に移動させてもらいましょう。また、化学物質除去能力の高い高性能な空気清浄機の設置を依頼するとよいでしょう。新しい建材や新しいOA機器(プリンターなど)から出る揮発性有機化合物(VOC)が原因となる場合があるため、それらから距離を取ることも肝心です。

就業規則・勤務形態の柔軟化:

満員電車やオフィス内の混雑など、化学物質曝露リスクが高い時間・場所を避けるため、柔「時差出勤」「在宅勤務」など柔軟な勤務形態を相談しましょう。症状悪化時のための病気休暇や休職制度について事前に確認しておくことも忘れずに行いましょう。

学校での対処法(教職員・クラスメイトへ)

養護教諭や担任の先生に状況を伝え、学校全体で「化学物質過敏症」への対応マニュアルや対応策を確立してもらいましょう。また、授業中も可能な限り窓を開けて換気を行うこと、掃除用洗剤やマーカー、絵の具、接着剤など、授業で使用する教材について、なるべく刺激の少ない製品に切り替えてもらうなど、要望を的確に伝えるようにしましょう。すべてに応えてもらえなくても、それらが症状の原因になることを伝えるのが大切なのです。

さらには、教職員の協力のもと「化学物質過敏症」についての正しい知識をクラスメイトに分かりやすく伝え、香料などへの協力をお願いする啓発活動を行ってもらいましょう。(保健だより、学校だより、朝のホームルームなど)

学校はまだまだ「化学物質過敏症」への理解が深まっていません。体育の授業後の制汗スプレーの使用など、思春期ならではのニオイ対策を気にする年頃でもあります。学校と密に連携し、粘り強く対策していくことが大切です。

日常生活で症状を緩和させるための実践的な方法

症状をコントロールし、生活の質(QOL)を高めるためには、日々の努力と工夫が欠かせません。まずは、自宅での曝露回避を徹底します。

自宅の環境

自宅は「安全なシェルター」であるべきです。徹底的な環境整備が不可欠です。柔軟剤、芳香剤、消臭剤、香りの強い洗剤、シャンプー、化粧品などは、すべて無香料・無添加のものに切り替えましょう。家族にも協力を仰ぎます。衣類や寝具も化学物質が付着しにくい天然素材(綿、麻など)の衣類や寝具を選び、こまめに洗濯しましょう。

窓をこまめに開けて換気することも大切です。また、化学物質除去に特化した高性能な空気清浄機を導入することも検討しましょう。

家庭内での曝露回避|見落としがちな盲点

自宅を安全地帯にしても、外部や予期せぬものから化学物質が入ってくることがあります。ニュースで取り上げられていた足立さんもトリガーは通行人の柔軟剤の香りでした。隣人や近隣からの「香害・排気ガス」も気をつけなくてはなりません。窓やドアの開閉は、時間を調整することが必要です(特に洗濯物干しや車のエンジン始動時)。

また、古い家電は故障や経年劣化により不完全燃焼ガスや化学物質を発生させる可能性があります。エアコンやヒーターのフィルターは頻繁に掃除し、異臭がする場合は使用を控えましょう。

最後に盲点なのが、本や雑誌、そしてダイレクトメールです。印刷インクや紙に含まれる化学物質に反応する人がいます。新しい本や雑誌は、開封後すぐにビニールから出し、しばらく(数日〜数週間)換気の良い場所に置いて「匂い抜き」をしてから読むようにしましょう。

食事からのアプローチ(栄養面)

体内の解毒機能を高め、免疫力を整えることが症状緩和に繋がる場合があります。無農薬・減農薬の食材を積極的に取り入れましょう。農薬は化学物質過敏症のトリガーとなる可能性があるため、可能な範囲で安全な食材を選ぶようにしましょう。また、加工食品やレトルト食品を避け、食品添加物の摂取を控えることも大切です。そして何より腸内環境の改善が症状緩和につながる例もあったそう。腸は免疫機能の要です。発酵食品(味噌、納豆、漬物など)や食物繊維を積極的に摂り、腸内環境を良好に保つことも症状緩和につながります。特にミネラル(亜鉛、セレンなど)は解毒酵素の働きを助けるといわれています。

ストレス管理と自律神経の調整

ストレスは自律神経を乱し、化学物質過敏症の症状を悪化させることが知られています。症状が出たら無理せず休みましょう。休むことは逃げではありません。また、軽いストレッチ、腹式呼吸、アロマテラピー(ただし、天然精油でも反応する可能性があるため、安全なものを選ぶか、無香料環境で行う)など、自分に合ったリラックス法を見つけると良いでしょう。

まとめ

化学物質過敏症は、見えない物質との闘いであり、患者さんご本人の努力だけでは解決できない、社会全体での理解と協力が不可欠な病気です。

症状に悩むあなた。あなたの感じる不調は「気のせい」ではありません。適切な情報と対策を知り、自分に合った環境を整えることで、必ず生活の質は改善できます。一人で抱え込まず、専門医や患者会に相談してください。

そして症状を知らない周囲の方。 香りのある製品の使用を少し控える、換気に協力する、といった小さな配慮が、CSに苦しむ人にとっては「命綱」となります。目に見えない病気への理解と温かい思いやりをお願いします。

誰もが安心して暮らせる「無香料・低化学物質」の社会を目指して、私たちは共に行動していく必要があります。

Follow me!

(スポンサーリンク)

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次