電気が流れるストローや箸⁉ 日本人研究チームがイグノーベル賞を受賞

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人々を笑わせるような面白い研究や独創的な発明に送られるイグノーベル賞。2023年度の受賞者が9月15日に発表され、明治大学の宮下芳明教授と東京大学の中村裕美特任准教授が「栄養学賞」を受賞しました。日本人の受賞は17年連続とのことです。

目次

イグノーベル賞とは

ノーベル賞のパロディとして1991年に創設されました。人々を笑わせるような面白い研究や独創的な発明に贈られる賞のことです。「裏ノーベル賞」ともいわれています。

毎年秋、ノーベル賞の発表と同じ時期にハーバード大学のサンダーズシアターで表彰式が行われます。ノーベル賞と同様に物理学、化学、平和、経済学、医学、文学などの部門もありますが、その他に生物学、心理学、昆虫学などノーベル賞には無い部門も存在します。

毎年多くて10組が選出される仕組みで、賞金はありません。書類選考はノーベル賞受賞者を含むハーバード大学やマサチューセッツ工科大学の教授ら複数の選考委員会の審査を経て行われます。

今回受賞した「電気が流れるストローや箸の研究」とは

宮下芳明教授と中村裕美特任准教授の2人は2011年、電気刺激を舌に与えると味覚がどう変化するかを調べるため、微弱な電気が流れる箸やストローを開発。これらを使って味覚の変化を調べて研究発表しました。この研究はさまざまな論文に引用されるようになったそうです。最終目標は「味のデジタル化」だというから驚きです。

具体的な研究内容は、舌にある味覚を感じ取る「味蕾(みらい)」という器官に電気刺激を与えるというもの。この味蕾に直接電気を与えると、塩味や酸味、苦味を感じるそうです。この現象を「電気味覚」と呼ぶそうですが、「電気味覚」自体は1750年にSulzerが金属を舌に乗せた時に種類によって味が異なることを発見したことが発端。そこから長い間研究され続けているというわけです。

そこから日本の研究チームが登場し、食品を食べる際に、電気刺激を同時に与えればその食品の味を変えられるのではないかと考えた研究がはじまりました。電気味覚を使えば塩分控えめの食べ物でも十分ジューシーに感じられるなど、疾患により食事制限を行う必要がある方たちにも希望の光となるものです。実際に「減塩食を“しょっぱく”感じられる箸型デバイス」が開発されているそうです。

今回のイグノーベル賞受賞に際し、宮下教授は「今回の受賞をとても光栄に思います。受賞対象論文は13年前に開発した技術に関するものですが、電気味覚技術や味覚メディア技術はその後、多方面に渡る発展と社会実装に至っています。そうした広がりや今後への期待が込められた受賞だと捉え、これからも研究を推進していきたいと思います」とコメントしています。

歴代の主な日本人受賞者と研究内容

(Wikipediaより引用)

部門授賞事由および詳細等受賞者
1992年医学賞「足の匂いの原因となる化学物質の特定」という研究に対して神田不二宏八木栄一郎福田實中嶋啓介太田忠男中田興亜(以上、資生堂研究員)[1]
1995年心理学賞ハトを訓練してピカソの絵とモネの絵を区別させることに成功したことに対して渡辺茂慶應義塾大学教授)[2]坂本淳子(慶應義塾大学)脇田真清(慶應義塾大学)[3]
1996年生物多様性賞岩手県岩石からミニ恐竜、ミニ、ミニドラゴン、ミニ王女など1000種類以上に及ぶ「ミニ種」の化石を発見したことに対して。「ミニ種」はいずれもすでに絶滅しており、体長は0.3mm以下だったという。岡村長之助(岡村化石研究所)
1997年生物学賞「人がガムを噛んでいるときに、ガムのによって脳波はどう変わるのか」という研究に対して柳生隆視関西医科大学講師)ら[4]
1997年経済学賞たまごっち」により、数百万人分の労働時間を仮想ペットの飼育に費やさせたことに対して横井昭裕ウィズ真板亜紀バンダイ
1999年化学賞夫のパンツに吹きかけることで浮気を発見できるスプレー「Sチェック」を開発した功績に対して牧野武(セーフティ探偵社)
2002年平和賞犬語翻訳機「バウリンガル」の開発によってヒトイヌ平和と調和をもたらした業績に対して佐藤慶太タカラ鈴木松美日本音響研究所小暮規夫獣医師
2003年化学賞ハトに嫌われた銅像の化学的考察」。兼六園内にある日本武尊の銅像にハトが寄り付かないことをヒントに、カラス除けの合金を開発した。廣瀬幸雄金沢大学教授)
2004年平和賞カラオケを発明し、人々が互いに寛容になる新しい手段を提供した」業績に対して(によって相手に苦痛を与えるためには、自らも相手の歌による苦痛を耐え忍ばなければならない)井上大佑(会社経営者、大阪府
2005年生物学賞131種類のストレスを感じているときに出す特有のにおいを全部嗅ぎ分けてカタログ化した、骨の折れる研究『においを発するカエルの分泌物の機能と系統発生的意義についての調査』に対して早坂洋司オーストラリアワイン研究所)[5]
2005年栄養学賞34年間自分の食事写真に撮影し、食べた物がの働きや体調に与える影響を分析したことに対して中松義郎(ドクター中松)
2007年化学賞ウシ排泄物からバニラの香り成分「バニリン」を抽出した研究山本麻由国立国際医療センター研究所研究員)
2008年認知科学賞単細胞生物の真正粘菌パズルを解く能力があったことを発見したことに対して中垣俊之北海道大学/理化学研究所小林亮広島大学石黒章夫東北大学手老篤史北海道大学/Presto JST[6]山田裕康名古屋大学/理化学研究所[7]
2009年生物学賞ジャイアントパンダの排泄物から採取したバクテリアを用いると、台所生ゴミは質量で90パーセント以上削減できることを示したことに対して田口文章北里大学名誉教授)ら[8]
2010年交通計画賞鉄道網など都市のインフラストラクチャー整備を行う際、真正粘菌を用いて輸送効率に優れた最適なネットワーク[要曖昧さ回避]を設計する研究に対して。中垣俊之、小林亮、手老篤史の3人は、2008年の認知科学賞に続いて2度目の受賞。2010年受賞のこの研究は、2008年の研究を継続・延長させたもの。中垣俊之公立はこだて未来大学小林亮広島大学手老篤史科学技術振興機構さきがけプロジェクト)高木清二(北海道大学)三枝徹(北海道大学)伊藤賢太郎(北海道大学)弓木健嗣(広島大学)ら[9]
2011年化学賞火災など緊急時に眠っている人を起こすのに適切な空気中のわさびの濃度発見と、これを利用したわさび警報装置の開発今井真(滋賀医科大学講師)漆畑直樹(シームス)種村秀輝(シームス)田島幸信(香りマーケティング協会理事長)後藤秀晃(エア・ウォーター防災)溝口浩一郎(エア・ウォーター防災)村上純一(琵琶湖病院)広浜秀次(研究開発担当)
2012年音響賞自身の話した言葉をほんの少し遅れて聞かせることでその人の発話を妨害する装置「スピーチジャマー(Speech Jammer)」を発明したことに対して栗原一貴産業技術総合研究所塚田浩二お茶の水女子大学[10][11]
2013年化学賞たまねぎに多く含まれているアミノ酸を反応させるとを誘う「催涙物質」が作られ、目を刺激し、涙が自然と出てくる仕組みになっている研究今井真介柘植信昭朝武宗明永留佳明[12]澤田 博(以上、ハウス食品長田敏行 東京大学名誉教授(法政大学教授)熊谷英彦 京都大学名誉教授(石川県立大学長)
2013年医学賞心臓移植をしたマウスにオペラの『椿姫』を聴かせた所、モーツァルトなどの音楽を聴かせたマウスよりも、拒絶反応が抑えられ、生存期間が延びたという研究内山雅照(順天堂大学帝京大学)平井敏仁(東京女子医科大学天野篤(順天堂大学)場集田寿(順天堂大学)新見正則(帝京大学)
2014年物理学賞床に置かれたバナナの皮を人間が踏んだときの摩擦の大きさを計測した研究に対して馬渕清資北里大学教授)田中健誠(北里大学)内島大地(北里大学)酒井里奈(北里大学)
2015年医学賞キスアレルギー患者のアレルギー反応が減弱することを示した研究に対して木俣肇(開業医)
2016年知覚賞前かがみになって股の間から後ろ方向にものを見ると実際より小さく見える「股のぞき効果」を実験で示した研究に対して[13]東山篤規(立命館大学教授)足立浩平(大阪大学教授)
2017年生物学賞雄と雌で生殖器の形状が逆転している昆虫(トリカヘチャタテ)の存在を明らかにしたことに対して吉澤和徳(北海道大学准教授)上村佳孝(慶應義塾大学教授)
2018年医学教育賞堀内朗が自身で内視鏡を操作し自分の大腸を検査した結果をまとめた論文「座位で行う大腸内視鏡検査―自ら試してわかった教訓」に対して堀内朗昭和伊南総合病院消化器病センター長)
2019年化学賞典型的な5歳の子供が1日に分泌する唾液量の測定に対して渡部茂明海大学保健医療学部教授)大西峰子今井香河野英司五十嵐清治[14]
2020年音響学賞ヘリウムガスを使うとワニのうなり声も高くなる(ドナルドダック効果)ことを発見したことに対して西村剛京都大学霊長類研究所准教授)
2021年動力学賞歩行者同士が時には、衝突することがある理由を明らかにする実験を実施したことに対して[15]村上久京都工芸繊維大学助教)西成活裕東京大学教授)西山雄大(長岡技術科学大学講師)
2022年工学賞つまみを回すときの直径と指の本数との関係に対して[16]松崎元(千葉工業大学教授)
2023年栄養学賞電気刺激を施した箸やストローを用いた味覚の変化について[17]宮下芳明明治大学教授)中村裕美(東京大学特任准教授)
Wikipediaより引用

2023年度の受賞者と研究内容(日本以外)

◆化学・地質学賞:なぜ多くの科学者は石をなめるのが好きなのかを説明したこと

 【受賞者】ヤン・ザラシェヴィッチ

◆文学賞:一つの単語を何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も繰り返した時に覚える感覚の研究

 【受賞者】クリス・ムーラン

      ニコール・ベル

      メリタ・トゥルネン

      イリーナ・バハラン

      アキラ・オコーナー

◆機械工学賞:機械じかけのマジックハンドとして、死んだクモを生き返らせたこと

 【受賞者】ティ・フェ・ヤップ

      ジェン・リウ

      アヌープ・ラジャパン

      トレバー・シモクス

      ダニエル・プレストン

◆公衆衛生学賞:人の排せつ物を迅速に解析するため、尿検査用の試験紙や排せつ分析のための画像解析システム、肛門認証センサー、さらにオンラインシステムなど、多様な技術を搭載したスタンフォードトイレの発明

 【受賞者】パク・スンミン

◆コミュニケーション学賞:逆さ言葉が達人たちの精神活動の研究

 【受賞者】マリア・ホセ・トーレス・プリオリス

      ディアナ・ロペス・バロッソ

      エステラ・カマラ

      ソル・フィッティパルディ

      ルーカス・セデーニョ

      アグスティン・イバニェス

      マルチェロ・ベルティエ

      アドルフォ・ガルシア

◆医学賞:左右の鼻毛の本数が同じかどうかを確かめるために死体を用いた研究

 【受賞者】クリスティーン・ファム

      ボバク・ヘダヤティ

      キアナ・ハシェミ

      ティアナ・ママガミ

      エラ・チュカ

      マルギット・ユハジ

      ナターシャ・マシンスコフスカ

◆教育学賞:教師と生徒の退屈に関する体系的研究

 【受賞者】ケイティ・タム

      サヤニア・プーン

      ヴィクトリア・フエ

      ワイナン・ヴァン・ティルバーグ

      クリスティ・ウォン

      ヴィヴィアン・クワン

      ジジ・ユエン

      クリスチャン・チャン

◆心理学賞:路上で見知らぬ人が上を見上げているのを見た時にどれだけの通行人がつられて上を見上げるのかを調べた実験

 【受賞者】スタンレー・ミルグラム

      レナード・ビックマン

      ローレンス・バーコヴィッツ

◆物理学賞:カタクチイワシの性活動がどれだけ海洋混合に影響を与えるのか

 【受賞者】ビエト・フェルナンデス・カストロ

      マリアン・ペーニャ

      エンリケ・ノゲイラ

      ミゲル・ギルコト

      エスペランザ・ブルロン

      アントニオ・コマサーニャ

      デミアン・ブファート

      アルベルト・ナヴェラ・ガラバト

      ベアトリス・モリーニョ・カルバリード

 

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